4分の1 コアラ

旅行・まちあるきの記録をしようと思っていましたが細々と日記を書くことにします。

2月15日、マラケシュ ②

2020年、冬。モロッコ・スペイン・ポルトガルを旅した16日間の記録です。

 

Day 1 「これがマラケシュさ」

レストランを出て、旧市街を歩きます。小さな広場には多様な品物を売る人々が店を出していて、エスカルゴのような貝を立ち食いしていました。

 

ジャマ・エル・フナ広場へは戻らず西の方へ進んでいくと、道路上に品物を並べて商売を繰り広げる人の数が減り通行できる幅がやや広くなるので、バイクが猛スピードで駆け抜けていきます。石畳の通りはバイクからの排ガスで煙っていて見通しが悪いほど。明日までの飲み物を確保するため、ペットボトル飲料を売っている店を探すと、割とすぐに見つかりました。「Hawaii tropical」という炭酸飲料を手に取り、店主らしき男性に値段を聞くと、「ここに書いてあるよ」とペットボトルのラベルを指差して教えてくれました。なるほど、店ごとに値段を決めるのではなくメーカーが販売価格を表示する仕組みは理に適っているなあ、と感心。1Lで7ディルハムと安かったので迷わず購入しました。ファンタオレンジにココナッツを加えたようなフレーバーで、第一印象は「なるほど…」という感じ。飲んでいるうちに美味しさが分かってきます。(Hawaiiはコカ・コーラ社がモロッコ限定で販売しているとのこと。)

 

時期が時期だけに、この時点では日本人どころかアジア系の人をほとんど見かけていなかったのですが、各自飲料を入手して店を出たところで、日本人女性が1人で歩いているのに出会いました。強い。

 

そのまま石畳の細い路地を西へ向かうと、小さなアーチをくぐってララ・ファティマ・ザラ通り(Rue Lalla Fatima Zahra)という名前の幹線道路に辿り着きました。この通りを南へ進むと、世界遺産でもある街の象徴、クトゥビア・モスク(Koutoubia Mosque)があります。高さ77mのミナレットに登ってみたいな…と周囲を歩き回るも開いている入口は見当たらず。神聖な空間であり、異教徒が中に入るのは許されていないようでした。

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クトゥビア・モスクのミナレット

そのまま、隣接するララ・ハスナ公園(Parc Lalla Hasna)へと抜けました。王女の名前を冠したこの公園には春になると美しい薔薇が咲くようですが、この時期ではまだまだ。ベンチでは地元の人たちが歓談しており、ネイマールのユニフォームを着ている若者も。このあたりが旧市街メディナの西端で、公園の西側に位置するラ・マムーニア(La Mamounia)やソフィテル・マラケシュ・パレ・インペリアル(Sofitel Marrakech Palais Imperial Hotel)といった5つ星ホテルから先は新市街ゲリーズとなっています。

 

日暮れも近いことから、私たちは旧市街に戻り南側のロイヤル・パレス方面を目指して歩くことに。とにかく幹線道路を渡るのが難しく、渡ろうとしている地元の人についていくのが精一杯でしたが、当然ドライバーたちも観光客を轢きたくはないので、「渡れ」と手で合図をしてくれたり、渡り始めると減速したりしてくれました。

 

突き当たったところがフェルブランティエ広場(Place des Ferblantiers)で、ここに面してレストランのオープンテラスの数々が。「コロナ!チャイナ!」と熱烈な歓迎を受けながら広場を進んでいくと、城門のような出で立ちの赤っぽい壁が見えてきました。写真の奥に見えている門をくぐると、ベリマ通り(Rue de Berrima)に出ます。その向こうにはエルバディ宮殿(Palais El Badii)があるのですが、残念ながら営業時間外でした。(8時から17時のようです。)

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少年たちはサッカーに興じていた

私たちはロイヤル・パレスを目指していたので(今になってグーグルマップを確認すると、27件しかレビューがないので中には入れないのだろうと分かるのですが…)城壁に沿ってベリマ通りを南下することに。途中には近代的な集合住宅群があり、調剤薬局の看板を見ながら突き当たったバブ・エル・アルダー通り(Rue Bab El Arhdar)を右折するとロイヤル・パレスの正門らしき場所へ出ます。ここへ来て、物々しい警備員、閉じた門、1台も車が停まっていない駐車場から中には入れないことを悟りました。それにしても、人生で初めてのアフリカの夕焼けは綺麗でした。街灯の独特なイルミネーションも味があります。

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ロイヤル・パレスの南側から見た夕焼け

この時間から宮殿などに入場して観光するのは難しいだろう、そしてお腹が空いてきたということで、ジャマ・エル・フナ広場に面したレストランで夕食を食べるべく中心部へ戻ることに。ロイヤル・パレスの門の前で記念写真を撮り、車1台分の幅しかない狭い門を対向車に気をつけながら通過して、北に向かいます。するとここにも大きな門が。もしかしたらここからなら中に入れるかも…と思い歩いていくと、すぐに警備兵から「向こうへ回れ!」と指示され敢えなく断念し、案内の通り細い門からカスバ地区へ。このあたりはホテル街でもあり、閑静な雰囲気でした。

 

入り組んだ街路を抜けると、お土産屋の立ち並ぶトゥグマ通り(Rue Tougma)に出ました。実は先ほどフェルブランティエ広場に向かう際にも一度通っていたので、その時に見た、各国の国旗を甲羅にプリントされた小さな亀たちにもまたお目にかかりました。フェルブランティエ広場からジャマ・エル・フマ広場へと続く狭い道はリアド・ジトゥン・ラクディム(Riad Zitoun Lakdim)と呼ばれていて欧米からの観光客も多いのですが、その分怪しげな風貌の地元民の姿も。中盤に差し掛かったころ、「ヘーイ!チャイナ!」と囃し立てながら数人の若い男が道を塞いできました。こちらも常に警戒していたのですぐに「おい!」と大声で応酬しますが、笑いながら私が手に持っていたペットボトルを奪い取ろうと近づいてきます。すかさずペットボトルを振り上げ叩きつけるようなポーズを取ると、「ワーオ!」と面白がるように声をあげて去っていきました。何も盗られなくてよかったものの、ひとりで歩いていたら厳しかったな、という印象でした。

 

そうこうしているうちに(ヨーロッパからの観光客らしき人々のすぐ後ろをついていくようにして)ジャマ・エル・フナ広場に辿り着きました。ゲストハウスのスタッフお勧めのローカル料理レストランの1つ「Toubkal」へ。クスクスやタジン鍋が30〜40ディルハム前後と安く、店内は主に観光客で賑わっていました。アトラス山脈に位置するモロッコ最高峰のトゥブカル山の名前を冠しているので、日本でいうと「富士」という店になるわけですね。いかにも観光客向けな感じはありますが、それはそれで安心感があります。テーブルの下では1匹の猫がうろうろ。パンなどをもらっているのでしょうか。

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挽肉のタジン

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椅子の下から食べ物を窺っている猫さん

広場の印象は昼間ともガラッと変わり、たくさんの露店と行き交う人々、暖色系の明かりに包まれ情緒的な雰囲気に。旧市街メディナの主要なアーケードであるダーブ・ダバチ通り(Derb Dabachi)を通って宿へ向かい、モロッコでの最初の1日が幕を閉じました。(とはいえ、宿に着いてからも、ダブルベッドに寝ざるを得ない人を決めるためのあみだくじ、スタッフへの洗濯の依頼、トイレや洗面台との仕切りのない設備に苦戦し床を水浸しにしたシャワーなど、マラケシュの夜はまだまだ長かったのです。)

 

どんなに予想外のことが起きても「これがマラケシュさ!」と笑い飛ばす余裕が出るまでには、もう少し時間が必要なのでしょう。初めて訪れる土地での余裕のなさは旅行の醍醐味ではあるのですが。さあ、2日目はマラケシュから鉄路でカサブランカへ向かいます。

Adios!